つぶやき 2

今日、久しぶりに街に出て高校生時代を思い出させる駅に行ってみた。市内のJR駅に行くのは5、6年ぶりだろうか。切符が吸い込まれたと思えば飛び出てくる式の改札機、1分たりともズレない発車時刻と細かすぎる車両情報を教えてくれる電子掲示板(遅延は赤文字できちんと伝える)、朝夕ともに学生やサラリーマンでいっぱいになる構内のナナいちいち、そして常に3個300円セールのMr.ドーナツ屋さん。たかが駅なのに便利すぎる日本らしい駅。こんな駅はどこにでもあるかもしれないが、贅沢にも3年間新幹線通学をさせてもらった私にとってはあの駅には割としっかり思い出がある。

四季を感じさせる山の中を客を酔わせながらのんびり進む電車と、ただただ高速で突っ走る新幹線の間には乗り換え改札がある。在来線で帰って行く友達を見送った後、その改札を抜けわずかな乗り継ぎ時間に賭けて新幹線ホームまでの階段を駆け上がるのは毎放課後のことだった。待ち合わずドーナツと共に1時間、青チャートと睨めっこする日もよくあった。

土曜日の今日でも自習や部活から帰ってくる母校の制服を着た学生の姿があり、疲れ以上に1週間の達成感に満ちた表情をしているように見えた。彼彼女たちを眺めながらひとり懐かしんでいると、目の前をアメリカのスーパーマーケット、Trader Joe’sのショルダーバッグを提げた女性が通り過ぎていった。私の口角はウレタンマスクの下で自然と上がっていた。世界って広いようで狭いな、なんて。

今日のこの一連、駅観察はたった5分くらいのものだった。それ以下だったかもしれない。切符も買わず誰かを見送るわけでもなく、ただ思い出の改札を見つめるだけの私の姿は側から見れば少し不思議だったかもしれない。なんとなく浸っていた。短いようで長いな、なんて。